陳木勝(ベニー・チャン)死去

香港の映画監督・陳木勝(ベニー・チャン)死去(8月23日)の報道を「りんご日報」からかいつまんで。

 

最後の作品はドニー・イェンとニコラス・ツェ共演の《怒火》で昨年末に撮り終わっており、上映を待っているところ。この映画の撮影中から不調を感じ、検査をしたところ鼻咽頭がんのすでに末期であった。撮影は終了したが、すでにポスプロをする体力はなく、他の人が代わって行った。ここ数ヶ月は沙田のプリンス・オブ・ウエールズ病院(公立病院)に入院していたが、コロナウイルスの影響で友人らも見舞うことができなかった。がんの進行は思いの外早かった。数日前、ジョン・シャムはアルバート・ヨン(英皇の社長)に連絡し助けを求め、養和病院(香港で一番有名な私立病院、ハッピーバレーにある)のへの転院の手はずをとった。しかし転院2日後に帰らぬ人となった。

 

ベニー・チャンは1981年、高校卒業後、麗的電視(レディフュージョン:亞視電視の前身)に事務職兼スクリプター兼演出助手として入社したが、翌年には無線電視へ移りジョニー・トーの元で演出助手を務めた。のちに演出に昇格し《雪山飛狐》(1985年:レイ・ロイ主演)、《倚天屠龍記》(1986年:トニー・レオン主演)などのテレビドラマを撮った。5年後無線を離れ、レイモンド・ウォン監督の《呷醋大丈夫》(1987年、レイモンド・ウォン&チェリー・チェン主演のコメディ)、レオン・ポーチ監督の《殺之戀》(1988年、レスリー・チャン&チェリー・チェン主演)で執行導演(エグゼクティヴ・ディレクター)を務めた。その後、再び亞視電視で《皇家檔案》(1989年)、《中華英雄》(1990年)などのテレビドラマを撮った。

 

犯罪もの映画に秀でているベニー・チャンの作品中でもアンディ・ラウ&ン・シンリン主演の《天若有情》(アンディ・ラウの逃避行:1990年)が最も有名だ。しかし、この映画はプロデューサーであるジョニー・トーが大部分を撮影していた。映画は評判も興業成績も良く、またアンディ・ラウに「華弟」と言うスタンダードとなる役を作り上げた。ベニー・チャンには犯罪ものの商業映画作品が多く、《衝鋒隊:怒火街頭》(1996年)、《雙雄》(ヒロイック・デュオ 英雄捜査線:2003年)、《新警察故事》(香港国際警察NEW POLICE STORY:2004年)、《保持通話》(コネクテッド:2008年)、《掃毒》(レクイエム 最後の銃弾:2013年)で5度香港電影金像奨の監督賞にノミネートされたが受賞には至らなかった。

 

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