燈火闌珊(燈火<ネオン>は消えず)

張艾嘉、任達華、周漢寧、蔡思韵 曾憲寧:監督 2022年

香港とネオンサインは切っても切れないものでいつでもそこにあると思っていたのだが、安全性に問題ありとする政府の政策で次々と取り壊されてしまっている。香港らしさを次々と剥ぎ取っていく政府には怒りさえ感じる。本作はそんな消えゆくネオンとネオン職人の家族の物語。ネオンの儚い光を愛しむように映画を愛しむ。ただ白状すると、実は張艾嘉が少し苦手である。上手いんだけどね、苦手。

2024.01.12@ Bunkamura Le Cinéma 渋谷宮下

天龍八部之喬峯傳(シャクラ)

甄子丹、吳樾、陳鈺琪、劉雅瑟、王君馨、惠英紅、呂良偉、徐小明、袁祥仁、喻亢 甄子丹:監督 2023年

原作は金庸の小説「天龍八部」。武俠片はファンタジーなので、軽々と人が飛んだり超人的な技が華麗に繰り出される事も多いが、今作では繰り出される技がどれも重量級なのは甄子丹ならでは。久しぶりに“武俠片を観た”という気になる映画だった。最後に登場する喬峯の父・蕭遠山(甄子丹二役)がかっこいいのと、慕容復(吳樾)の父・慕容博(呂良偉)の存在感がすごい。ちなみに上映は広東語版。

この日は動作指導の谷垣健治さんが登壇。撮影裏話などを語ってくれたが、興味深い事が多くて時間が足りない。

2024.01.06@TOHOシネマズ錦糸町

濁水漂流(香港の流れ者たち)

呉鎮宇、謝君豪、李麗珍、蔡思韵、朱栢康、寶珮如、柯煒林 李駿碩:監督 2021年

実際に起こった事件を元にした物語。刑務所から出てきたばかりの輝哥(吳鎮宇)は深水埗へ戻ってきた。そこには老爺(謝君豪)をはじめとする路上生活者の仲間がいた。彼らは薬物中毒であり、服役経験者であった。ある晩、政府は路上生活者たちを掃除という目的で何の通告もなく追い立て、彼らの持ち物のすべてをゴミとして捨て去った。21人の路上生活者はソーシャルワーカーの何姑娘(蔡思韵)の力を借り、謝罪と各々3000香港ドルの賠償金を政府へ要求した。

どんな人にも尊厳があり、それは尊重されなくてはならないのだ、ということを改めて考えさせられる映画。2度目の鑑賞。吳鎮宇もいいのだが、やはり謝君豪の老爺が本当に素晴らしかった。

2023.12.16@ユーロスペース

《失衡空間》香港怪奇物語 歪んだ三つの空間

〈暗角〉暗い隙間 顏卓靈 許業生:監督 

不倫とストーカー+ビルの隙間と引越し先の部屋

〈死場〉デッドモール 林曉峰 陳果:監督

投資を勧めるユーチューバーとユーチューバーを信じて損をした人々+幽霊がでると噂の寂れたショッピングモールと火事

〈唐樓〉アパート 任賢齊 馮志強:監督

ずぶ濡れの物体(幽霊)と殺人事件+古い唐樓

2022年

3つ場所にまつわる物語。香港独特の怪奇現象映画(鬼片)かと思いきや、実はそうなっていないのは、やはり大陸対策か(大陸は幽霊禁止)。

2023.12.03@シネマカリテ

蘭心大劇院(サタデー・フィクション)

鞏俐、趙又廷、トム・ヴラシア、オダギリジョー 婁燁:監督 2021年

太平洋戦争開戦前7日間の上海租界を舞台にしたスパイ映画。虹影の小説「上海之死」を元にしており、蘭心大劇院で上演される劇(劇中劇になっている)には横光利一の「上海」が使われている。全編モノクロ。

鞏俐はいいんだけど、他に役者はいないのか。オダギリジョーも悪くはないけど、彼である必要があるのか、無駄遣いでは?などと思ってしまった。最後の最後の鞏俐の心が分からず、消化不良。

2023.11.08@UPLINK吉祥寺