白白青春(白白青春・生きてこそ)

黄秋生、周國賢、サハル・ザマン、潘文星、喬加雲、劉錫賢、太穂、張同祖 劉國瑞:監督 2023年

香港のタクシー運転手とパキスタンから逃れてきた難民の子供の話。タクシー運転手の白日(黃秋生)もかつて大陸から香港に泳いでやってきたいわば難民。その過程で妻を亡くし、息子は大陸に置き去りになり引き取るのに時間がかかってしまった。今は警察官になった息子との関係はぎくしゃくしたままだ。 ハッサン(サハル・ザマン)の父はパキスタンでは弁護士であったが、難民として香港に妻と逃れてきた。ハッサンは10歳(ぐらい)、香港生まれだ。 白日とハッサンの父はちょっとしたいざこざから交通事故を起こし、ハッサンの父は亡くなってしまう。白日はハッサンに自分の息子の姿を重ねていき、非香港人ギャングの手先にされ警察の手入れから逃れたハッサンを匿い、彼の願いであるカナダに送ってやろうと考えるようになるのだった。

2組の親子の物語であり、難民問題も考えさせられる。ここでもやはりこれまで見過ごされていた人々に焦点を当てるという最近の香港映画の視点が特徴的である。そして監督自身もマレーシアから18歳の時に香港にやってきた華僑である。

舞台挨拶に登壇した黄秋生は、最初に脚本を受け取った時に整合性がない部分があり、脚本家に差し戻したという。しかし演じるに当たっては難しい事はなく、役の核となる部分を捉えていればよかったと話していた(それが一番難しい事だと思うのだが)。彼の言葉の通り黄秋生の演技は的確で、顔つきから変わって見えた。最初から黄秋生をあてて脚本を書いたのだろうか。

なお香港では、難民は受け入れても市民権を与える事はなく、第三国への仲介はするが時間がかかる。つまり10年も香港に住んでいるが就労はできず補助金で生活しなければならない。調べてみると、2018年には家賃補助1500ドル(子供は750ドル)、水道光熱費補助300ドル、スーパーなどでの購入券1200ドル、交通費補助200-400ドルといった補助金が支給されているようだ(これらは1人あたりだと思われる)。ちなみに2018年第4四半期の香港の就業者の年収の中央値は1人暮らしの場合9,100ドル、3人家族は33,900ドルだ。中央値の3分の1ほどの金額しかない補助金の少なさについては度々新聞記事にもなっているようだ。

黄秋生の舞台挨拶あり

2024.01.26新宿武蔵野館